著者
水月昭道 Private or Broken Links
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カテゴリ
College graduates
発行日
2007-10
読書開始日
2024-04-18
3選
- こうした人的資源の無駄遣いを生み出している政策を指弾し,資源の再利用を求める権利を行使していくことが求められる.なにしろ,自らの税金が無駄に使われているのだから.日本には,もはや無駄金を使う余裕は,これっぽっちもないのは誰もが知っていることではないか.庶民の大切なお金が,10年以上も無駄に使われているのである
- (法科大学院において)平均収修養年限3年の課程を終えると,法務博士が授与される.同時に,新司法試験が受けられるようになる.だがそれは,修了後,5年以内に3回までという制限がある.では,3回までのチャンスに合格できなければ,彼らはどうなるのだろうか.(中略)実は,大学院に再入学すれば2年後(法学の知識を修めた経験があると認められた場合には,3年ではなく2年で修了できる)には,また,再受験のチャンスを得ることができる
- 「はたらけど はたらけど猶(なお) わが生活(くらし)
楽にならざり ぢつと手を見る」石川啄木が詠んだあの時代は,「ワーキングプア」と呼ばれる彼らにとっては,現在そのものなのである.
メモ
本書は,いわゆるロスジェネ,就職氷河期世代の人が大学院の博士を苦労して獲得して卒業しても正社員就職ができず,フリーターになるしかなかったという筆者や周囲の実体験が記載されたルポルタージュ. 大学院重点化は文科省主導で進められたが,それは少子高齢化の起こるこれからの社会で大学が減少すると東大の学者たちの食い扶持がなくなってしまうためという裏の目的があったと本書は言う.加えて,文科省は大学院に対して定員枠を埋めれば予算を25%アップさせるという施策を実行したため,これまで大学院に進学を勧められないような学部生にも進学を促すような事態が各所で起こった. 大学院重点化政策により研究者にも難しい選択を迫られた.学部で東大,大学院とポスドクを早稲田で過ごした研究者はこれまで研究予算獲得で困ったことがなかったが,その後某地方大学に助教授のポストに惹かれて移籍したところ,途端に研究予算が獲得し難くなったという.研究者の受け皿を増やしたのは良いものの,その他の業務が充分に回っておらず,結局大学名で短絡的に見てしまっているのだという.
本書で出てくる印象的な博士が二人いた.パチプロ博士白石さんと羽藤さん
パチプロ博士「この仕事に,博士号など関係ないですからね.むしろ,知られることのほうが,大学教員になれなかった負け犬と思われそうでイヤですよ」 彼の場合,高校卒業後6年ぐらいフリーターで過ごしていたが24歳のとき大学に入学,研究の面白さに目覚めて35歳で博士号を取得.取得した頃の雰囲気をこう語る「目に見えて,就職浪人が増えてきました.かつては,気がつくと先輩の就職が決まって姿が消えるという感じでしたが,いつまでも研究室から姿がなくならないという感じになりました」そして,この博士号を取得して卒業した人たちは講義もないのに大学に来て研究生として在籍するために学費を払い続けていたという… そうした世界に見切りをつけ,現在白石さんはパチプロで月収30万円という.凄いな.
大学の金儲けのためにこうした無責任な大学院重点化が行われていたとすると本当に嘆かわしい.
羽藤さんは,教員を一生の夢と位置づけず,ある時点での目標と位置づける.これでダメだったら見切る.「最初から,教員へトライするのは三年だけと決めていました.そうでなければ,キリがないからです」「もしそれでダメなら,それは,私にとってやらなければならないことが他にある,ということなんだと思っています」 彼はポスドクだが,全く固執していない.
米国の場合は,アドミッション・オフィスなどの公的な入試を手掛ける組織に,博士号取得者が高度な専門的知識を有する人間として就職する道があるが,日本だとそんなものはなく塾講師になる「しかない」.この「しかない」という認識はそのまま「(研究者になれないので)仕方なく」という認識であるため,雇用側も「専門家として」雇用しているつもりもない.学部卒と同じ給与になるのはそのためだ.
博士号というのは音楽家というアナロジーで説明されるのかもしれない. 音楽科のある大学や大学院に通っても,音楽家になれるわけではない.幼い頃から厳しい練習を続けてきた人のみが,プロになる道がひらけている.そういう素養を身に着けている人が結果的に大学や大学院に通ったに過ぎない.
のだめカンタービレは音大を舞台にした漫画・アニメだが,才能の有無,競争社会,縁故社会というドロドロした生活が比較的明るいタッチで描かれている.というか主人公ののだめが「才能ある」側なので救われている,という側面が強い.才能がない人間は…? 立ち去るのみだろう.博士号を取得した後の研究者のポストというのもそういう世界なのだろう.