起業家はどこで選択を誤るのか ― スタートアップが必ず陥る9つのジレンマ - ノーム・ワッサーマン, 小川育男

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著者

ノーム・ワッサーマン, 小川育男 Private or Broken Links
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カテゴリ

Business & Economics

発行日

2014-01-24

読書開始日

2025-06-20

3選

  • 連続起業家4人によるパネルディスカッションでは「スタートアップには独裁が必要」という点で意見が一致した。こんな発言があった。「自分で最終決断を下すか、最終決断を下す共同ファウンダーの下で働くかのどちらかです。とにかく『共同CEO』はうまくいきません」これは多くの起業家が自ら学ばなくてはならない教訓であるようだ。ベテラン起業家の大多数は平等主義的アプローチに警告を発するが、創業チームの大多数はスタートアップ初期段階で平等主義的アプローチを選ぶのである。
  • フィードバーナーのディック・コストロはこう述べている。「人選を誤った際に最も厄介なのは、組織にいったん入るとその人物は友人になり、そうすると「なぜ私の友人を解雇するのか?」ということになることです」。結果として、多くのファウンダーは失敗を犯す不安から人を雇う際に優柔不断になるしまたは「時間をかけて雇う」ことになる。だが、報酬と役割を結びつけると、この問題は解決しやすくなる。たとえば、営業担当者に対して厳しい条件が付いた報酬体系を用意すると、スキルに自肩がない候補者を遠ざけ、業績の低い従業員は自ら辞めるようになる。
  • 会社の転機で成功を左右するのは、あいまいでわかりにくい要素なんです。私は自分が雇った従業員と、これまで築いてきた文化にとても満足していたので、会社に自分の足跡を残したいとか、支配権を行使してチームを変化させねばならないと考える人物は避けたいと思いました」。また、ルーは「まだ失敗したことがなく…..謙遜を知らないような」自信過剰な人物は避けたいと思っていた。ルーはある候補者が「恐れを動機付けとして使っている」と感じたために彼の着任を拒否し、また「若く、野心が大きく、絶えず(自分の)能力を証明する必要がある」ような人々を避けた。

    メモ

スタートアップ企業をたくさん研究した研究者の本.学ぶことも少なくないのだが,とにかく分量が多い.もっと簡素に伝えるべきことを余すことなく伝えようとしていて結果的に伝えることがブレている印象.

この本にはたくさんの図表が出てくるので,多くはこれを眺めるだけで十分だろう.

本書で最も大事な表は次だと思う.

富かコントロールかのジレンマ(図11-1)

スタートアップの関係者 分類 (A) コントロール維持を重視する決断 (B) 富の最大化を重視する決断
共同ファウンダー ソロかチームか ソロファウンダーのまま(あるいは立場の弱い共同ファウンダーを募る) 創業チームを作り、最良の共同ファウンダーを募る
  人間関係 まわりを見まわして「付き合いやすい」共同ファウンダーを身近で探す 強い絆も弱い絆も利用して最良の(そして補い合える)共同ファウンダーを募る
  役割 意思決定の場をしっかりコントロール下に置き、階層構造を作る 特定の分野においては専門知識のある共同ファウンダーに意思決定のコントロールを委ねる
  報酬 エクイティの共有分はすべて自分で持ちつづける 共同ファウンダーを募るため、あるいはモチベーションを高めるためにエクイティを共有する
従業員 人間関係 個人的に親しい間柄にある人(友人や元同僚など)を雇って安心感を得る 最適な人材を見つけるために積極的に探しに行く人員(未知の人材)
  役割 重要な決定のコントロールを維持する しかるべきエキスパートに意思決定を委ねる
  報酬 高い給与を支払わずに済む若手を雇う 経験豊富な人材を雇って金銭報酬とエクイティでインセンティブを与える
投資家 自己資金か外部資本か 自己資金(ブートストラップ) 外部資本を入れる
  資金調達先 友人や家族、または出資額の小さなエンジェル投資家。可能であれば別の資金調達先(顧客からの前払い金や借入など)を探す 経験豊富なエンジェルまたはベンチャーキャピタル投資家を探す
  契約条件 投資家に有利な条項を退ける(いわゆるスーパーマジョリティ条項を認めない) 最良の投資家を引き付けるために投資家に有利な条項を認める(スーパーマジョリティ条項など)
  取締役会 正式な取締役会は設置しない。設置する場合はメンバー構成をコントロールする 最適な投資家と取締役会を設立するために取締役の構成に対するコントロールを失うことを受け入れる
後継者 交代のきっかけ 強要されるまでは交代の議論を避ける スタートアップが次の段階に進む際、自分で「経験不足だ」と思ったら交代の議論を始めることを受け入れる
  交代を受け入れる姿勢 CEOを退くことに抵抗する CEOを適任者に譲ることを受け入れる
  交代後に望む役割 「プリンス」として留まるよりも去ることを選ぶ 自分のスキルと志向に合ったポジションの経営幹部として残ることも
その他の要因 スタートアップの望ましい成長スピード 漸進的〜普通 急速〜爆発的
  資本集約度 低資本集約度 高資本集約度
  コアファウンダーの「資本」 十分な資本があり、人の助けなしでスタートアップを立ち上げ、成長させられる 深刻に不足している資本があり、人の関与によって埋められる必要がある
予想される結果 - コントロールを維持する。比較的小さな事業価値構築に留まる 経済的価値を構築する。コントロールを失う危険がある

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  強み 弱み
役割重複 - スタートアップ初期段階に適した柔軟性がある
- 各チームメンバーが必要に応じて売り込みを行える
- チームメンバー全員の集団的知識を活かせる
- 職責の分散がやる気を下げる
- 人員過剰な場合は重複する職責を可能な限り減らす努力をしなくてはならない
- 他のメンバーの領分に立ち入ると緊張が高まる
- スタートアップが展開して分業化が進むと,特定の部門や分野に担当が限定されるのを拒むチームメンバーが出てきて緊張が高まることがある
役割分担 - 肩書,仕事,職責を割り当てやすい
- 説明責任を果たしやすい
- 異質性の高いチームの場合,各ファウンダーの強みに合わせて役割を割り当てやすい
- 分野をまたぐ仕事で各部門を協力させるのが難しくなることがある
- 均質なチームの場合,初期には最適な役割ではなくて,次善の役割を割り当てざるを得ないことがある
- 会社が発展しないと,組織体制と職務の必要性にずれが生じる恐れがある
  平等主義的 階層的
メリット - 見知らぬ人動詞が信頼関係を築くのを促す
- 友人同士のチームの場合,待遇を平等にするという意思の確認になる
- 意思決定者は新戦略に素早くリソースを回すことが出来る
- 説明責任が明確である
デメリット - 合意に至るまでに時間がかかりすぎる事が多く,特に変化の激しい起業環境では問題になる
- 説明責任があまり明確ではない
- 複雑な状況は1人では処理しきれない.たいていは専門知識のある複数の人間から情報提供を受けるとより適切な判断ができる
早期に分割する 後で分割する
エクイティによるインセンティブを必要とする重要な人物を引き入れるため 共同ファウンダーの貢献度を理解するため
すでに別のスタートアップで共同ファウンダーと十分に仕事をしたことがあるため 戦略とビジネスモデルを固めるため
分割が難しい問題になる前に冷静な話し合いをするため 役割をはっきりさせるため
  共同ファウンダーのコミットメントを理解し,インセンティブを強めるため
  状況が変化した場合に交渉を繰り返すことを避けるため

エクイティの分割を決定する要因

  • これまでの貢献:スタートアップの価値構築に,これまでどれくらい貢献してきただろうか?
    • アイデアプレミアム:スタートアップの基盤となる独創的アイデアを提供したファウンダーは,そのベンチャーに唯一無二の貢献をしている
    • 資本拠出:ほかのファウンダーより多くのシード資本を提供したファウンダーは金額に比例してエクイティ所有権が増加すると考えるだろう
  • 機会コスト:スタートアップに携わるために何を犠牲にしているだろうか?
  • これからの貢献:スタートアップを成功に導くために必要な仕事の大半はこれから先の話であり,貢献を予測するのは難しい.各ファウンダーは今後どれだけスタートアップの価値への貢献が期待できるだろうか?
    • 連続起業家:過去に別のスタートアップでエグジットを成功させたことのある創業メンバーは,今後,人的資本と社会関係資本の面で大きな貢献が期待できる
    • コミットメントレベル:フルタイムで取り組むファウンダーはより多くの価値をもたらす貢献が期待できる
    • 肩書き:創業メンバーの正式な役職はエクイティの分割に影響を及ぼすことが明らかになっている.CEOはかなりのエクイティプレミアムを得る
  • ファウンダーの動機と好み
    • 真の動機はより大きなエクイティシェアを重視することにつながるだろう
    • リスク回避性向と楽観主義はエクイティとキャッシュによる報酬のどちらかをどれだけ重視するかに影響する
    • 対立耐性はどれだけ積極的に話し合いを持とうとするかに影響を及ぼす
    • 創業前の関係はエクイティの分割への期待値に影響を及ぼすことがある

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  個人的な関係(家族,友人) 元同僚
平等分配の法則 安定性のあるチーム 安定性のないチーム(ビジネス論理と整合していない)
公平分配の法則 安定性のないチーム(社会的論理と整合していない) 最も安定性のあるチーム

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  (経済的利益が)潜在的価値をはるかに下回る結果 (経済的利益が)潜在的価値を顕在化
(意思決定のコントロール維持)脇役 失敗 リッチ
(意思決定のコントロール維持)主役 キング リッチ&キング

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いる。「思うに…・・・・会社の転機で成功を左右するのは、あいまいでわかりにくい要素なんです。私は自分が雇った従業員と、これまで築いてきた文化にとても満足していたので、会社に自分の足跡を残したいとか、支配権を行使してチームを変化させねばならないと考える人物は避けたいと思いました」。また、ルーは「まだ失敗したことがなく…..謙遜を知らないような」自過剰な人物は避けたいと思っていた。ルーはある候補者が「恐れを動機付けとして使っている」と感じたために彼の着任を拒否し、また「若く、野心が大きく、絶えず(自分の)能力を証明する必要がある」ような人々を避けた。

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これまで見てきたファウンダーたちとは異なり、ルー・サーンは初期に出くわす数々の落とし穴を回避してきた。キャリアのまさに第1歩から、成功するスタートアップを築き上げるための選択をしてきたといえる。ダートマス大学でコンピュータ・サイエンスの学位を取得し、アップルコンピュータで職を得て技術的な素養をさらに深めた。アップルで仕事をしながら、Javaで書かれた企業向けシステムのための診断ツールのアイデアを思いつき、自らハイテク・スタートアップを立ち上げる計画を立て始めた。技術と経営の両面でもっと経験を積み、スタートアップを内部から観察しようと考え、創業間もないIT会社、ハミングバードで2年間働いた。「新しい会社のファウンダーや初期

従業員とはどんなものかを知りたかったんです」とルーは述べている。「アップルでは集中してひとつの役割に取り組みましたが、もっと自分の幅を広げたいと思いました…・..(会社を)始める動機のひとつは、技術者としてではなく、ビジネスパーソンとして成長することでした」。ハミングバードにいるあいだ、ルーは起業経験者から助言を受けてアイデアに磨きをかけ、雇用と資金調達について理解を深めた。

ルーはソロでやることに決め、自己資金とエンジェル投資家から調達した10万ドルで、ワイリー・テクノロジーを創業した。ルーは当初からこのスタートアップに熱心に取り組み、ワイリーのためならどんな苦労も厭わなかった。丸1年間ひとりで夢中になって働き、Javaベースの技術を開発した。アイデアについてのホワイトペーパーをIBMに送りこそれがワイリーの最初の売上につながった。ルーはその後、技術以外の業務を引き受けてくれる「ジェネラリスト」を雇い、自身は引き続き製品開発に取り組んだ。初期の取締役会メンバー(エンジェル投資家)がその新たな従業員にエクイティを与えるのを渋ると、ルーは自分のエクイティを分割して与えた。「(自分のエクイティの一部をその従業員に)譲渡したので、ほかの株主の分は希薄化しませんでした」。ルーは「自分のエクイティの希薄化は気にせず、ワイリーのことを第1に考える」という主義に従ったのだった。

製品とビジネスプランを改良しつづけ、売り込みに行くために初めてスーツを買った頃、ルーは本格的な製品開発のためにもっと資金を調達する必要があると考えた。そして技術に関する強みと製品に対するビジョンをもとに、外部投資家から200万ドルを調達した。その後アップル時代の同僚をチーフサイエンティストとして雇った。これは「自身が技術者であるファウンダーにとってはかなり難しい判断でした」とルーは述べている。だが、製品の新バージョンは新たなリーダーシップのおかげでうまくいった。ルーは重要な役割を担う人々をさらに雇い、CEOである自分が受け取るよりも多額の給与を支払った。

ルーはVCからの助力と助言を得てワイリーを着々と築き上げていった。初期のマイルストーンすべてを達成し、さらに成長を続けたのである。会社が製品の新バージョンを出荷し始め、新たな資金調達ラウンドについて交渉が開始されると、ルーはいっそう張り切った。だが、その興奮がたちまちショックに変わったのは、資金提供者が新しいラウンドの条件としてルーにCEOを辞任するよう求

めてきたときだった。「その後は本当につらかったです」とルーは振り返っている。「考えることといえば、どこで間違えたのか、何がそんなに悪かったのか、そんなことばかりでした」。揚げ旬の果てにCEO後任候補のリチャード・ウィリアムズは、ルーが取締役会の会長も辞任しない限り、CEO

職を引き受けないと言いだした。このとき、ルーは大きなジレンマに直面した。ワイリーの価値を高められるプロを雇うことを拒否するか、プロを雇って、たったひとりの我が子のように育ててきたスタートアップにおける主役の座を完全に譲るのか

誤った人選だったとわかった従業員を解雇する際に広がる波紋は厄介な問題だ。

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スタートアップのコントロールを維持したい、すべての決断を自ら下せるようにしておきたい、多くの時間を投資家とやりとりするのではなくビジネスの成長に費やしたいと考えている。以前の経験またはメンターや経験豊富なファウンダーに聞かされた話から、外部資金調達のデメリットを知っており、それを避けることにしたのだ。ブライアン・スカダモアは決して投資家に頼らないとはっきり決めてスタートアップを設立した。「申し出があったとしても、外部から資金を受け取るつもりはありませんでした。父から教えられたことです。『外に出誰かから資金をもらうべきではない。小さく始めて自分の力で育てるんだ」と」


スタートアップと投資家双方にとって重要な決断となるのが、資金調達ラウンドの間隔である。私の調査データではテクノロジー業界のベンチャーが平均15ヵ月、ライフサイエンス業界のベンチャーが平均17ヵ月の間隔を空けてい

マイケルに5%のプレミアムを上乗せすることで合意した。

ほかのファウンダー(たとえばジェームズ・ミルモ)の考えでは、アイデアはエクイティの量ではなく、エクイティが付与される即時性で報いられるべきだという。ジェームズはリンクスで共同ファウンダーと均等にエクイティを分割することに合意したが「彼にこう言いました。『君にはベスティングを設定したいが、私は必要ないと思う。アイデアを出したのは私で、君を会社に誘ったのも私だ。私はすでに自分のシェアに見合う働きをしたー発明と特許にはかなりの価値があるーでも、君は

2年間働いて自分で獲得しなくては』

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早い等分チームと遅い等分チームは(エクイティをどう分割したかではなく、それらのチームに何らかの違いがあることによって)その後の成功の程度が異なるのだろうか。このことを定量的に判断するために、トマス・ヘルマンと私は最初の資金調達ラウンドに着目した。各チームおよび各スタートアップのさまざまな違いを調整して分析したところ、早い等分チームは、遅い等分チームや不均等分割を選んだチームに比べて著しく低い評価額となっていることが判明した。これは、分割について真剣に対話を行ったチームと、真剣な話し合いを避けて手っ取り早い握手に頼ったチームとでは実際に違いがあるケースを裏付けている。 –—

雇用をめぐる決断を理解するための枠組みとして役立つのが、スタンフォード大学新興企業調査プロジェクト(SPEC)が調査した、ハイテクノロジー業界のスタートアップに見られる従業員関連の「青写真」に関する研究である。この研究では大勢のファウンダーからの回答を3つの側面ー採用、報酬、コントロールーに沿って分類。回答者は採用の3つの根拠、報酬の3つの根拠、仕事を調整/コントロールする4つの手段のうち、どれを取り入れたかを明確にした。これらの要素の考え得る組み合わせは36通り(3✕3x4)あるが、そのうち5つの組み合わせー研究者は「青写真」と呼んでいるーを取り入れていたスタートアップは全体の67%を占めて


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フリーライダー(ただ乗りする人)とは、ほとんど、またはまったく貢献をしていないにもかかわらず、集で努力したことによって利益を得る人のことをいう。この文脈では、エクイティを所有しているが、価値製造への貢献が割に合わないファウンダーのことであり、貢献しなくてもエクイティシェアは変わらないことがそうする理由のひとつとなっている。

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ベスティング」とは、一定期間が過ぎることによってまたはあるマイルストーンを達成することによって、割り当てられたエクイティを手に入れる要件を示している。ベスティングはエクイティがインセンティブとして機能する際の中心的役割を担うことがあり、また、通常はそうあるべきである。

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「肩書きの慣性」を軽く見る

誰がCEOになるかは取るに足らない問題だとあっさり片づけてしまうのは驚くほど簡単だ。誰か

(アイデア発案者だったり、単に最も声が大きいファウンダーだったりする)がCEOに名乗りを上げたときに、騒ぎ立てず唯々諾々と従うこともできる。初期段階では誰もが懸命に働いてスタートアップを成功させようとしているので、誰に何の肩書きがあるかはほとんど問題にならないようだ。だが、CEOにはかなりの象徴的、実質的権力があるし、スタートアップが必ずしも小規模で和気あいあいとした平等主義のままでいるとは限らない。創業チーム全員で誰が最初のCEOに適任かをきちんと決めるべきであり、慣性の力が後々の意思決定に利き、大きな混乱を覚悟しないとその決定を覆すのが困難になることを理解しておくべきだ。1度決めたCEOが変化する要請についていけなかったり、後で別のファウンダーのほうがCEOに向いているとわかったりしても、難しい。ほとんどのCEO

はその立場と権力をなかなか手放そうとしないからだ。

この問題がとりわけ深刻なのは(よくあることだが)アイデア発案者がCEOに就きたいと考えているときだ。初期段階のCEOに必要な情熱とビジョンを備えているので、アイデア発案者をCEO

にするのはごく自然な選択だと思えることが多いが、創業チームはアイデア発案者が(情熱とビジョンだけではなく)あらゆる点でCEOに最適かどうかを慎重に判断する必要がある。もしかしたら会長、チーフ・テクノロジー・オフィサー、チーフ・サイエンティフィック・オフィサーといった(情熱とビジョンが求められる)別の役割のほうが適しているかもしれない。

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チームの結束と早期の肩頼構築を最優先とし、集団的意思決定アプローチがそれを促すと言じるチームがある。また、集団的意思決定は失敗を避ける最良の手段だと考えるチームもある。実際、ハイテク起業家が直面するダイナミックで変化の澈しい環境においては、支配的な独裁CEOはそれほど支配的でないCEOに比べて成功する確率が低い。イノベーションが重要視されるコンピュータ業界における大企業26社を対象とした調査では、CEOの支配性向により企業業績が19%減少しているとされた。また、マイクロコンピュータ業界の8社を対象とした調査では、重要な戦略上の決断を下す権力がCEOに集中していればいるほど、トップ経営陣内で競合する派閥が形成され、業績が悪化するという関係が明らかになった。


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スタートアップのファウンダーは家庭生活のメタファ1を用いることが多い。共同ファウンダーになるかもしれない人と会うことは結婚前のデートだ。そして無論、ハネムーン期間が来ると(あるファウンダーによれば)「熱いロマンスであるかのようにビジネスに取り組む」。ファウンダーがスタートアップに抱く愛着は親が子どもに抱く愛情と比較されることが多く、ファウンダー自身、スタートアップを「我が子」と呼びつづけたりする。共同ファウンダー同士の緊張の高まりは夫婦げんかに喩えられ、ファウンダー間の合意書は婚前契約に、ファウンダーの決裂は離婚に喩えられ 聖書に記された最初の結婚を踏まえて創業チームについて考えてみると、価値あることが学べるかもしれない。神が創造したばかりのアダムと、これからまさに創造しようというその伴侶の理想的な関係について考えたとき、その関係を表す言葉は聖書へブライ語原典ではエイザー・クネグド (Eizer K'negdo)、「対立する支援者」という意味だった。「対立する」「支援者」とは矛盾しているように思えるが、この言葉は結婚にとっても、スタートアップの共同創業にとっても、非常に重要な一面を捉えている。つまり、異なるスキル、経験、責務、動機を有するパートナーから反対されたり、緊張が高まったりしながら、一体化した協力関係を育むということだ。創業チームが考慮すべきは、誰とチームを組むか、チームとしての関係をいかに築くか、報酬をどう分配するかといった初期の決断がその後どんな結果につながるかである。