婚活戦略 - 高橋勅徳

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著者

高橋勅徳 Private or Broken Links
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カテゴリ

発行日

2021-10-15

読書開始日

2025-06-20

3選

  • お見合いと仲人による結婚の正統化.我が国における婚姻のパターンは、家同士の取り決めによる見合い結婚から当人同士の合意に基づく恋愛結婚、婿入り/嫁入り婚など、時代や地域、社会階層ごとに多様性を有していたことが歴史学・民俗学において指摘されている。その中でも現代にも残る仲人制度は、もともと家制度が確立した社会階層・地域において、家同士の利害相手を調整し、結婚までを取り仕切る役割として生まれたとされている(落合、2004、48-49頁)。仲人とは、家制度を中心として社会階層(武士・貴族など)や地域社会の再生産を媒介する役割を有していた。それ故に仲人にはロールモデルとして夫婦円満であることが求められるだけでなく、家間の利害調整を実現しうるだけの社会的地位を有していることが求められていた。既に江戸時代には、農村部から多数の独身者が流入する江戸・京都・大阪などの都市圏において、生業として仲人が誕生していたとされる(今井、2015、20-21頁)。これは、人の流動性が高い都市圏では配者探索の範囲が広がりすぎるため、家柄を考慮しつつ適切な結婚適齢期の男女を引き合わせ、結婚まで取り仕切る専門職として仲人業が求められるようになったからであるとされる。この専門職としての仲人は、見合いを斡旋した家から、結納金や持参金の1割を礼金として受け取っていた。同時に、江戸時代において礼金を目当てに結婚を斡旋する仲人は、批判の対象でもあった(今井、2015,21-22頁)。いわば、結婚という家と家の私的問題に礼金目当てで介入していくことは、地域社会の名士たる仲人としての品格に欠ける無粋な行動とみなされていたのである。そして阪井(2009)は、明治維新以後の文明開化以後に導入された個人間の自由恋愛という近代的な結婚観と、家副度を中心とした結婚という伝統との考盾を解消する存在として、近代的な仲人が再制度化されたと指摘する。この仲人は、一方では、家という旧弊とは異なる自立した個人間の自由恋愛での結婚を家同士の結婚として正統化する存在として、他方では、見合い婚を個人同士の出会いと自由意志での結婚として取り仕切る存在として、近代と伝統を渡しする役割を担っていた(阪井、 2009、96-99頁)。現代においても結婚式や披露宴において、職場の上司などに仲人を依頼する風習があるのは、明治期に制度化された代的な仲人が、意味合いを変えながら残存していると考えることができるだろう。 ロマンティック・マリッジ・イデオロギーと結婚相談所の変化 結婚相談所は、この仲人が明治期に事業化されたものであるとされる。1880年(明治13年)には養子女婿妻縁組中媒取扱所が大阪で設立され、1884年(明治17年)には東京で渡辺結婚媒介所が設立されている(eg..中山,1928)。これは、江戸時代に武士や豪商、豪農という特定の社会階層に必要であった仲人が、明治維新を経て階級社会が解体・再編成されていく中で、国民としてあるべき結婚を支援する仕組みとして求められたと考えられる。いわば仲人業・結婚相談所は純然たるビジネスというよりは、伝統的な家制度と近代的な個人を前提とした自由恋愛との間の軋轢を解消し、結婚を促していく私的領域の活動の延長線上にあった。しかし、仲人・結婚相談所という人々の結婚を正統化し、促していく仕組みは、高度経済成長を境に退潮していく。戦前に7割を占めていた見合い結婚は、高度経済成長期に減少を続け、1960年代末以降は恋要結婚が見合い結婚を上回り。1990年代半ばには見合い結婚は1割を下回った(中村、2017.50-51頁)。
  • 例えば、小林・能智(2016)は、婚活総合サービスの利用実績の分析を通じて、男性は職業・収入と身長の高さが、マッチングに影響したことを指摘している。具体的には、男性では登録会員の男性平均より身長が10センチ高く、正規雇用で収入が100万円多い場合に,結婚のチャンスが6.15倍高まる?。バブル期にモテる条件として3高(高身長・高学歴・高収入)がまことしやかに語られてきたが、現代の婚活市場においても高身長・高収入はモテる男性の条件として機能していると、最新の調査結果は明らかにしている。 (A) 婚活市場一婚活総合サービス業は,かつての仲人や結婚相談所とは異なり、出会いをサポートする役割を担っており、結婚できるかどうかは当事者間の合意形成=恋愛関係が実現するか否か次第である。 (B) 婚活女性には生存婚・依存婚・保存婚といった明確な戦略的目標が存在し、婚活総合サービス業を利用することで、男性を比較考量し、恋人関係を通じて配者として適切か否かを判断する婚活戦略を展開している。 (C) 非モテ男性が結婚するためには、出会いの機会を増やしていくとともに、自分の容姿やコミュニケーション能力を磨いていくことで、「恋愛によって」経済と恋愛の壁を乗り越えていく必要がある。
  • 例えば、ボーボワール (1949)は著書「第二の性』において、「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」というテーゼのもとで、アンケート調査や観察調査、言説分析を利用していくことで女性という性を規定する権力の働きを見出そうとした。これらを伝統的な研究方法であるとすれば、オートエスノグラフィーは研究者自身の性差別の経験から性を規定する権力の働きを記述する急進的な方法である。特に、自身の性を規定する権力の働きが大きく揺らぐ、トランスジェンダーや性転換手術の経験をもとにした論文が発表されている(egO'shea, 2019)。フェミニズム研究におけるオートエスノグラフィーは、社会生活における性差に関する問題について当事者にしか知り得ない知識を提供するとともに、その当事者性から既存の議論を批判的に発展していく貢献を提供してきた (Elisand Bochner, 2000,邦訳,138-139頁)

    メモ

婚活市場においては,

  • 男性は表層的な価値で計測可能であるために,女性は「スペック」を追い求め,晩婚化していく.婚活市場において女性は男性に自己開示をする必要がない.男性は陳列品であるから
  • 女性の価値は「器量」や「優しさ」といった主観的な価値であるために,男性は婚活市場で優位に相手を探すことができない.

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どうすればよいか.解決策として著者は「 (街コンイベント等で)女性に収入要件を設けるべき」と提案する.

女性には収入要件がないので,若くありさえすれば際限なく金持ちの男性や成功者の男性とで会えてしまうので,結婚を後回しにしてしまう.

確かに男女平等社会なんだから収入要件をつけた出会いの場は実現可能性も高いだろうと推測する.しかし,これは男性も望むかというと微妙である.強者男性は「若くありさえすればよい」女性を狙うわけで,双方ともに需要が今ひとつである.

個人的には,マッチングアプリ市場に法規制を入れるべきである.マッチングアプリ市場は今拡大しており,既婚者の4人に1人がマッチングアプリ経由だと言う.しかし,マッチングアプリの年齢確認は未成年か否かを確認しているだけで,サバを読んでも登録できてしまっているように思う.ここでも女性や運営会社に有利な構造ができており,男性利用者は少なくない金を払うことだけを期待されている.

また独身証明書の取得は従来面倒な手続きが必要であったが,最近は簡単になってきているようだ.電子的に独身証明書がやり取りできるようになれば,マッチングアプリに既婚者がいなくなり,そういったトラブルも減っていくだろう.

少子化というのは婚姻数の低下であることが既に多くの研究で知られている.そして少子化庁は子育て支援の名の下に夫婦に支援をしており,費用対効果の悪い施策に多額の税金を投じている.

行政がイマイチこの分野に遅れているのは政治家が「既婚男性」で構成されているからではないだろうか.女性の政治参加が叫ばれて久しいが,「未婚男性」「未婚女性」の政治家参加も必要なのではないだろうか.

今本当に少子化対策をしたいのであれば,男性の恋愛支援をしなければならない.先述のような多角的な戦略を持ちうる女性を更に支援することは格差の拡大を生むため考えにくく,むしろ男性を支援しなければ婚姻数の増加には結びつかないことは明らかである.

例えば,経営者や個人事業主であれば飲食代は経費にできるので付き合う前の女性を比較的誘いやすいが,給与所得の男性には付き合えるかどうか分からない女性に飲食代を出すのは惜しい.

この辺りの不均衡を行政が音頭を取って飲食店に誘導したり,あるいは国税が控除(年間上限30万とか?)として認めて年末調整で返ってくるようにすれば良いのではないだろうか.