テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想 - 橘玲

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カテゴリ

Philosophy

発行日

2024-03-19

読書開始日

2024-12-31

3選

  • 助成金を得て大学を中退、イーサリアムの普及に専念することになる。──ティールは、きわめて高い知能をもつギフテッドが大学で無為に過ごす期間は、本人にとっても社会にとっても損失だとして、大学を休学・中退して起業することを条件に、毎年、20歳未満の20人に資金支援するフェローシップを創設した
  • 〈効果的な利他主義〉は「動物の解放」で知られるオーストラリアの哲学者ピーター・シンガーが唱え、ピーター・ティールが賛同したことで注目を集めた(Effective Altruismから「EA」と略される)。(中略)善意もコストパフォーマンスで考えるべきで、同じ1万円を慈善活動に投じるなら、たまたまテレビで見た「かわいそうなひとたち」に寄付するのではなく、自分のお金がもっとも有効に使われる(同じお金でより多くの生命を救うことができる)プロジェクトを支援すべきだと論じた。(中略)善意もコストパフォーマンスで考えるべきで、同じ1万円を慈善活動に投じるなら、たまたまテレビで見た「かわいそうなひとたち」に寄付するのではなく、自分のお金がもっとも有効に使われる(同じお金でより多くの生命を救うことができる)プロジェクトを支援すべきだと論じた。
  • これを実現する方法がQV(クアドラティック投票)で、二次(Quadratic)の投票ルールは「公共財に影響を与える個人が支払うべき金額は、その人が持つ影響力の強さの度合いに比例するのではなく、その2乗に比例する」となる。QVの投票方式は、以下の点で1人1票とは異なる。
    • すべての有権者に一定数のボイスクレジット(投票権)が割り当てられる
    • 投票する際は、投票数の2乗のボイスクレジットが必要になる
    • 投票は支持する候補だけでなく、支持しない候補へのマイナス票に使える

メモ

「テクノリバタリアン」とは,科学技術や数学といったツールを自由のもとで最大限に活用して,人間生活,社会,国家を改善していくべきだ,とするような人々のことらしい.

リバタリアンは自由主義者,と通常訳されるが,ジョン・ロックの定義は

リベラリズムとは人の生活と自由と財産の権利を擁護し、他者を侵害しない原則に基づき、他人の生活上の活動を無限に尊重することである

である.自由を擁護し、政府による政治家都合の税制や規制を悪とみなす.ここ数十年はなぜか政府による奇妙な税制や規制の設置が「自由主義」の下で行われてきたが,本来の意味はそうしたパターナリズムとは無縁のイズムである.

この自由至上主義を技術で強く推し進めようとするのがテクノリバタリアンだという.まあ,エンジニアはみんなそうだと思うけど.

テクノリバタリアンには第一世代はピーター・ティールやイーロン・マスク,第二世代はヴィタリック・ブリテン,サム・バンクマン・フリード,サム・アルトマンなどが含まれる.

彼らは技術をフル活用して世の中に大きなビジネスインパクトを与えて,億万長者になった者ばかりだ.彼らは莫大な資金を背景に,お金儲けというよりも世界を変革することを本気で考えている.

彼らの考え方には共通点がある

  • テクノロジーを信じ,人間を信じない
  • 世界を悲観的に捉えており,世界の終末に備えている
  • その終末の前に技術を発展させて資本主義の問題点を修正する(加速主義)

加速主義とは,既存のシステム内を不安定化し根本的な社会的変革を生み出すために,現行の資本主義システムの過激な成長,急進的な技術革新あるいは各種インフラの解体といった,「加速」と称される社会変革プロセスの過激化を要求する思想である.

世界の終末を信じているのは,彼らの思想的ルーツがSF(サイエンス・フィクション)に端を発するようだが,おそらくここでいうSFとは日本的なドラえもんのような人間に親和的なロボットアニメというよりも,XMenやTransformersのような人類に敵対的なロボットやAIが登場するものを想定している.

彼らはどのように世界を終末から救うのか.ピーター・ティールなどは例えば「効果的な利他主義」を挙げている.

**効果的な利他主義**とは、限られたリソース(時間やお金)を使って、世界に最大限の良い影響を与えることを目指す考え方や運動です。科学的根拠やデータを重視し、どのような方法が最も効率的で効果的かを分析して行動します。具体的には、次のような特徴があります:

1. **原因の優先順位付け**

効果が大きく、未対応の問題に集中します。例えば、グローバルヘルス、動物福祉、気候変動など。

2. **コスト効率の分析**

少ないリソースで多くの影響を与える方法を探ります。例えば、マラリア防止のための蚊帳配布は、命を救うコスト効率が高いとされています。

3. **長期的視点**

現在だけでなく、未来の世代にとっても重要な問題を考慮します。

4. **行動の多様性**

寄付、キャリア選択、ボランティアなど、自分に適した方法で利他的行動を行います。

コスト効率の分析などはRCT(Randomized Controlled Trial)で検証し,より効果的な慈善行為に対して投資するよう促す.福祉にある種の競争原理を働かせるようだ.

**ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)**は、因果関係を評価するために用いられる科学的な方法です。治療や介入の効果を測定する際に、被験者をランダムに介入群と対照群に分け、比較することでバイアスを最小限に抑える手法です。

  

**特徴**

1. **ランダム化**

被験者を無作為にグループ分けし、既存の特性(年齢、性別、健康状態など)が均等に分配されるようにします。

2. **対照群の設定**

介入を受けるグループ(介入群)と受けないグループ(対照群)を比較し、介入の効果を明確にします。

3. **盲検法の使用(場合による)**

被験者や研究者がどちらのグループか分からないようにすることで、主観的バイアスを排除します(単盲検・二重盲検)。

  

**例**

  

薬の効果を検証する場合:

• **介入群**には新薬を投与。

• **対照群**にはプラセボ(偽薬)を投与。

• 結果として、病状の改善や副作用の差を統計的に分析します。

  

**メリット**

• 因果関係を明確に評価できる。

• バイアスを減らし、信頼性の高い結果が得られる。

  

**デメリット**

• 時間とコストがかかる。

• 一部の倫理的問題(例:有効な治療を受けられない対照群)。

  

RCTは医学、教育、経済学などさまざまな分野で活用されています。

この辺りは,“効果的な利他主義”宣言! - ウィリアムマッカスキル“効果的な利他主義”宣言! - ウィリアムマッカスキル

著者
ウィリアムマッカスキル
カテゴリ

発行日
2018-11
読書開始日
2024-12-31

3選




メモ


に詳しいらしい.いつか読む


他には,ゲーム理論家のグレン・ワイルという人物が提案する,選挙システムを変革するQV(クアドラティック投票)というアイデアが面白かった.

**Quadratic Voting(QV)**は、意思決定プロセスで個々の選好の強さを反映させるための投票方法です。各投票者が「投票の強さ」に基づいて投票数を割り振れる仕組みで、特定の問題に対する優先順位をより公平に表現できるようにします。

  

**仕組み**

1. **コストと投票数**

各投票者には一定のポイント(例:トークン)が与えられ、投票数を増やすごとにポイントの消費が**二乗**で増加します。

• 例:

• 1票 = 1ポイント

• 2票 = 4ポイント

• 3票 = 9ポイント

強い支持を示すほどポイントの消費が増えるため、慎重にポイントを使う必要があります。

2. **マイナス投票**

QVでは、特定の選択肢に反対意見を示すためにマイナス投票も可能です。

• 反対票も同じルール(ポイント消費が二乗で増加)に従います。

• これにより、支持だけでなく反対の強さも公平に表現可能になります。

  

**メリット**

• 優先度の強さを表現できるため、少数派の強い関心が無視されにくい。

• 資源の効率的な配分が可能。

  

**デメリット**

• 理解と実装が複雑。

• ポイントの初期分配が不公平だと結果に偏りが生じる。

• マイナス投票が感情的な「報復投票」に使われるリスク。

  

**応用例**

• 公共政策の意思決定。

• ガバナンスシステム(例:DAO)。

• イベントの優先順位付け。

  

QVは、従来の一人一票制に比べて、選好の「強さ」を反映させる点で柔軟性が高い投票方式です。

要は,アメリカ大統領選のような2大政党制における,一部の意見・党派に反対する結果として投票される「候補者Aでなければ良い」という選好が,中道派の無関心のために通ってしまうことを防ごうとしている.

例えば,第一次トランプ政権の誕生は,よく言われる背景として

  • 強い支持を示す「熱狂的な支持者」が存在した。
  • 中立層や反対層の投票行動が分散した。 と言われている.QVであれば,反対層は明確にマイナス投票ができるためトランプ政権を防げたかもしれない,あるいは熱狂的な支持者はトランプ政権にたくさん投票を投じるがそのコストは2次関数的に増加するため,熱狂的な支持を抑えることができたかもしれない,という.

個人的には,候補者に対してQVを適用するというよりも,政策単位で利用できるとかなり使い勝手が良いのではないかと思う.

しかし,投票行動の結果として,マイナス投票ばかりでプラス投票がなかった場合,投票数が-100よりも-10よりも「マシ」な政策となり-10の政策が実施される,ということが容認されるかどうかだ.

これに関してはラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀 - エリック・A・ポズナー E・グレン・ワイル Private or Broken Links
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が詳しいらしいので,いつか読んでみたい.


第二世代であるヴィタリックのエピソードが面白い.彼が中学生の頃

ワールド・オブ・ウォークラフトに夢中になったが、ある日、ゲーム会社がナーフ(ゲーム全体のバランスを調整するために、パッチやアップデートによってキャラクターのクラスやスキル、武器などを下方修正すること)によって、大好きなキャラだったウォーロック(魔法使い)の呪文を削除したことにショックを受け、ひと晩泣き明かした。この体験から、ブテリンは中央集権的組織への懐疑をもつようになったという。

飛躍が凄い.しかし本質的だ.中央集権的圧政にどう対峙するかを当時から考えていたのだろう.

確かに,時代は分散だと思う.中央集権的な思想はパターナリズムに走り,それはリバタリアンと対立する.一方で,生活や慣習に関して自由主義を完全に推し進めることは難しいと感じる.

かつて,マイケル・サンデルは個人主義でも全体主義でもない選択肢として,共同体主義を説いたが,そういうハイブリッドなアプローチが親和性が高いと思う.

そもそも近代の個人主義が推し進められたのは技術によることが大きいという,

統治のコストが高い場合、総督府は大雑把な統治以上のことはできない。その典型が家父長制で、社会をイエ単位で統治し、家庭のことはすべて家父長に任せることで、統治コストを引き下げている。「家族の問題に介入しない」という近代国家の原則は、統治管理の制約から必然的に生まれたものだ。ところがその後、コンピュータのような電子機器の導入や通信の整備などで統治コストが下がると、イエではなく個人(人格)単位で社会を統治することが可能になった。

現代では個人主義を強く実現できるような技術が進んでいるが,もっとこれを共同体ベースにすることで世界をより良くすることができるのではないかと思う.


この事実は知らなかった.

子宮内テストステロン濃度が高いほど、生後より多くの自閉流形質が発現することと、自閉症の子どもの脂内環境をって調べると(デンマークのバイオバンクにはこうした資料が保存されている)、一般的な子どもよりも出生前テストステロンの平均値が高いことが確認されている