コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版 - マルク・レビンソン, 村井章子

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著者

マルク・レビンソン, 村井章子 Private or Broken Links
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カテゴリ

Business & Economics

発行日

2019-10-25

読書開始日

2025-04-10

3選

  • メモ

    途中で読むのを辞めた.壮大な出落ち本.コンテナを作ることで物流が改善されたことを当時の背景とともに説明する.本書は殆どがコンテナ発祥の地アメリカの海運業界の話である.日本との関係で言えば,ベトナム戦争の帰りに空のコンテナ持って帰るのが嫌で日本に寄ったところ,ちょうど高度経済成長期の日本は良いお客さんになった… など一個一個の小噺は面白い.

コンテナ導入・変革期の様子は参考になる.当初は港湾労働者の反対もあり中々進まなかったが,粘り強く労使と協議を重ねることで今やコンテナ輸送は欠かせないものとなった.

その中でも特に「機械化・近代化協定」は大きな意味を持った.「機械化・近代化協定」により、高齢労働者の退職が進み、作業の効率化と労働生産性が飛躍的に向上した。しかし、経営側は設備投資よりも労働者の肉体的負担を増やす方向で効率化を図ったため、労働は過酷になった。結果として、「組合が経営側に機械化を求めるという立場の逆転」が起こった。

通常、労働組合は機械化による人員削減を警戒し、機械化に反対する立場をとる。しかしこのケースでは、過酷な肉体労働が続いた結果、労働者自らが機械導入を強く求めるようになった

これは本来の労使の役割が真逆になった極めて珍しい例であり、まさに「珍妙な労使逆転現象」である。

また,個人的にはこれは現代のソフトウェアエンジニアとAIとの関係に繋がるとも感じる.

つまり初期のAIや自動化ツールは、エンジニアにとって「仕事を奪う脅威」と見られがちだった。しかし、実際にはルーチン作業の効率化に役立ち、創造的な仕事に集中できるようになると気づく人が増えている。

港湾労働者が重労働から解放されるために機械化を求めたように、現代のエンジニアも反復的な作業から解放されるためにAI導入を歓迎するようになるという点で、構造が似ている。

「AIを恐れていたエンジニアが、むしろAIの導入を求めるようになる」という現象は、当時の港湾労働者が機械化を求めた奇妙な逆転現象と本質的に同じ構造を持っています。これは技術革新と人間の関係における普遍的なパターンといえるかもしれない。

そして,ソフトウェアエンジニアは「いなくなる」よりも、「役割が高度化・分化」していくのだろう.

以前は単にコードを書く人で,現在は設計し、AIと協働する人だったのが,これからは意思決定・価値創造・AI活用のエキスパートとなっていくのだろう.